こんにちは、ドイツ在住のMizukiです。
当ブログでは、度々Umschulung(職業転換訓練)やAusbildung(職業訓練)について取り扱ってきました。
Umschulungについて、またAusbildungとの違いについては別記事をご参照ください。
ドイツで新しい職業にチャレンジ!Ausbildungと同じ資格が取れる、2年間の職業転換訓練(Umschulung)について 職業訓練(Ausbildung)と職業転換訓練(Umschulung)どっちするべき?ドイツ商工会議所(IHK)の資格を取ろう!日本ではよく、学歴社会と言われることが多いですよね。ドイツでは資格・スキル社会だと私は認識しています。
日本との大きな違いは、どの大学を卒業したのかは重要ではないということです。
専門職の会社に就くという場合を除き、日本では有名な大学を卒業していると就職に有利になることが多かったりします。
ドイツでは、どの大学を卒業したのかというより、どんなことを学んできたのか・何ができるのかが重視されているように感じます。
そのため、AusbildungやUmschulungで取得できるIHKによる資格証明書や就職先に関連する大学にある学科の卒業証明書があれば、ドイツでは就職が有利になることが多いように思います。
もちろん、Ausbildungをしていなかったり大学を卒業していなくても就職することはドイツでも可能ですが、就ける仕事に限りがあったり、給料面で差が出たりします。
そのため、私はドイツ認定の資格取得を決心し、2022年にプログラマー(Fachinformatiker für Anwendungsentwicklung)のための職業資格を取得しました。
当記事では、私が実際にもらったプログラマーの資格証明書(Prüfungszeugnis)を公開したいと思います。
また、全ての点数はお見せしませんが、最終試験の結果も公開しようと思います。
これからAusbildungやUmschulungをしてみたい人など、参考になればと思いまとめてみました。簡単にですが試験結果についての説明も書いていますので、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
目次
IHKによる資格「Prüfungszeugnis」とは
IHKとは、Industrie- und Handelskammerの略です。日本語で言うと「商工会議所」になります。
AusbildungやUmschulungの試験を管理しているのも、このドイツ商工会議所「IHK」です。
つまり、試験に合格したらIHKが発行する資格証明書(Prüfungszeugnis)がもらえます。
職人系の職業の場合は「Gesellenbrief」とよばれるかもしれませんが、ここでは詳しく書きません。
資格を取得するメリットとは
では、IHKが出す資格を取得するメリットとはなんでしょう。
- 就職に有利になる
- ドイツ認定のIHKにより、その職業による専門知識・技術を証明書により認定される=応募の際に証明できる
- 給料・キャリアアップに繋がる
- 資格があることで採用されやすくなる
私のように日本からドイツに移住してきた者の場合、ドイツでも使えるキャリアや資格があれば就職に問題がない場合が多いです。
しかし、ドイツ語が流暢でないため十分にその仕事が出来ない、日本でしていたことや学んできたものがドイツでは役に立たないという場合はどうでしょうか?
不可能ではないと思いますが、住む場所に限られたり、語学力または知識や経験がない分就職が不利になる可能性があります。
私の場合、デュッセルドルフなどの日系企業が多くある町であれば仕事は見つけられたと思います。
事務系やホテル関係であれば日本でも3年半以上の経験もあるし、日本で大学を卒業しているので日系企業の応募要件を満たすことも多かったです。
なぜ日系だと有利だったのかというと、やはり当時の私の語学力でした。
しかし、結婚とともにデュッセルドルフからかなり離れた町に住むことになりました。
また、ドイツのどこに住んでいても仕事を見つけられるようになりたいという場合、日本で経験してきたものは完全に役に立たない場合もあると身をもって感じました。
そういった場合にも、ドイツ認定の資格があれば、ドイツのどの町に住んでも就職には困らなくなる、というのが私の当時の考えでした。
ちなみに、ドイツ語がある程度できないと資格を取得できないので、外国人の場合はIHKの証明書は語学証明にも繋がると思っています。
資格取得後にも可能性が広がる
私は2年間のUmschulungを経て、IHKが発行する資格(Prüfungszeugnis)を取得しました。
これがあれば、取得した資格の職業に関しては自信を持って応募できるようなります。しかし、この資格からさらに可能性を広げていくことも可能なのです。
以下、IHKから実際に貰った資格の段階表のようなものをお見せしようと思います。
私は2年間のUmschulungをしましたが、通常のAusbildungと同じ扱いになるので「レベル4(Niveau 4)」です。証明書にもどのレベルなのかということが記載されています。
上に行けばいくほど資格レベルが上がり、おそらくお給料も変わってくるだろうと思います。
Ausbildungは大学よりも実践が多いイメージですね。
どちらがいいとかではなく、何を学びたいかで大学なのかAusbildungかで選んだ方がいいと思います。
AusbildungやUmschulungを終えて、その後どこかの企業で就職したりフリーランスとして働くことも可能ですが、逆に今度は教える身になることも可能です。
その場合、すぐになれるという訳ではなく、そのための訓練期間および資格が必要になってきますが、今度はAzubi(Ausbildungの研修生)を教える立場になることだって可能です。
職業によってはマイスターをとることも可能ですし、AusbildungやUmschulungより上を目指す人はさらに勉強することも可能ですね。
私の資格証明書を公開
それでは、私がもらった資格証明書(Prüfungszeugnis)をご紹介したいと思います。
最終試験(筆記・口頭試験)での試験結果は次の段「私の試験結果」でお見せします。ここでは、あくまで私がもらった証明書の例です。
もしかしたら受験される地域や職業によっては少し形式が異なる場合があります。
また、職業によって試験内容はことなりますので、上記の試験内容はあくまで私が受験したプログラマー(Fachinformatiker für Anwendungsentwicklung)になります。
余談ではありますが、私達が受験した年から新しい試験形式が採用されており、同じ職業でも過去に受けた人でも試験・採点内容が異なっています。
このIHKの資格証明書ですが、ドイツ語だけでなく英語の証明書も貰えます。
日本ではドイツのこの資格は有名でありませんが、日本で就活する際にも、英語の証明書を提出するのもありだと思います。
私の試験結果
それでは、私の最終試験の結果(証明書ではTeil 2にあたるところ)を公開します。
Teil 2と書かれているところが最終試験になります。
プログラマーの最終試験は筆記と口頭試験に分かれており、その中でも
- 筆記試験:
1.共通科目
2.専門科目
3.WISO(一般教養のようなもの) - 口頭試験:
1.プロジェクト
2.論文
3.プレゼンテーション
4.質疑応答
と、細かく分かれています。
証明書に書かれている内容で説明すると、
- Planen und Umsetzen eines Softwares:口頭試験
- Planen eines Softwareproduktes:筆記試験の共通科目
- Entwicklung und Umsetzung von Algorithmen :筆記試験の専門科目
- Wirtschafts- und Sozialkunde:筆記試験のWISO(一般教養・経済等の質問)
①口頭試験
①の口頭試験の採点には、プロジェクト・論文・プレゼン・質疑応答の平均値です。私の論文は97点でしたが、他で足を引っ張ったため94点という配分になりました。
②筆記試験:共通科目
筆記試験についての余談ですが、IT関連の仕事でもプログラマーとシステムエンジニアで分かれています。
共通科目というのは、「プログラマーでもシステムエンジニアでも共通して学ぶ内容」と過去問までは把握されていました。
つまり、プログラマーだとしてもIPアドレスの計算やケーブルの種類などを学ばなくてはいけない、逆にシステムエンジニアでも簡単なプログラミングを勉強しないといけません。
AusbildungやUmschulung中、プログラマーでもシステムエンジニアが学ぶような内容も実際に学ぶことになります。そのため、幅広い基本的な知識が出題されるのが「共通科目」にあたるところです。
ただ、私達の試験から試験形式が変わり、私が受験した試験にはほぼシステムエンジニアの内容の問題は最終試験で出ませんでした。プログラマーが学ぶ基礎の部分の問題が多く、説明や計算などが多かったです。
しかし、もしかしたらシステムエンジニアの問題が出なかったのはその試験だけだった場合も考えられます。他の試験ではもしかしたら過去問と同じよう、システムエンジニア関連の問題も出題されているかもしれません。
同時期に受けたシステムエンジニアの人に聞いたら、彼らのところにはSQLや簡単なアルゴリズムの図解など、プログラマーの方が得意な内容が出題されていたと聞きました。
③筆記試験:専門科目
プログラマーの専門科目では、
- 問題を読み、コードを書く問題、
- SQLのコードを書く問題、
- プログラミングに関する専門知識を説明する問題、
- 計算問題、
- PAP(Programmablaufplan)やStruktogramm、Datenbankmodellなど図を書く問題
などが主に出題されました。
④筆記試験:WISO(一般教養・経済等の質問)
WISOは「Wirtschafts- und Sozialkunde」の略で、経済や法律などの問題が出題されます。
これは過去問をしていたらだいたい点数が取れる科目になるので点を取りやすいところですが、私はここが一番点数が悪かったです。
過去問では常に85点以上を取れていたのですが、今回のWISO、過去問には載ってない内容が出題されることが多かったのと、プログラマーの試験なのに消火器についての質問があったりと、変な質問が今回多かったです。
同じ試験を受けたドイツ語母国語の人も64点だったので、おそらく今回のWISOは異例だったんじゃないかと思います。
中間テスト(Teil 1)について
当記事では中間テスト(Teil 1)については触れていませんでしたが、私が受けた試験から、中間テストも最終試験の結果に考慮されることになりました。
全ての試験を終えた私の感想として、中間テストが一番難しかったと感じました。
過去の中間テストでは選択問題で合否は関係なかったのですが、試験形式が変わったことにより、中間テストは最終試験と同様全て記入式の問題になりました。
私は中間テスト・最終試験ともにすべて合格点を満たしていましたが、中間テストがやはり足を引っ張っているという印象です。
難しかったと感じたポイントとしては、
- 語学力不足だったこと
- 計算問題が多く、対策が出来ていなかったこと
- 授業についていくのに必死で、試験の準備が足りなかったこと
私がUmschulungを始めた時のドイツ語は、B2~C1くらいのレベルでした。
初めの半年間の授業の理解度は30%くらいしかなかったと思います。
Umschulungの中でかなりドイツ語力を上げられたので、1年後からは理解が速くなっていましたが、中間テストまではドイツ語と授業の基礎を理解するので手がいっぱいくらいだったことが原因です。
まとめ
私がこのIHKの資格を貰ったのは2022年夏です。
ドイツ語母国語だったらもっと授業を理解できていた、もっといい試験結果を取れていたんじゃないかと思ったことも多々あります。
しかし、まず私は試験に合格できたことが凄く嬉しかったですし、2年間頑張ってこれた自分に誇りを感じます。
ちなみにIHKの試験ですが、試験の点数も大切だとは思いますが、合否がまず大切なのではないかと思います。
例えば、法律を勉強している人は合格しているのは当たり前、試験の点数が将来を左右するという世界ですが、IHKにある職業ではそういった職種はかなり少ないです。
もちろん、就活の際に点数で判断する企業もあると思いますが、弁護士や裁判官などの場合、採用条件で最低点が設けられているような職種に比べるとましな方だと思います。
私はギリギリでもいいので資格を取得したかったので、当時の目標は叶いました。
むしろ、もともとITの知識もなく、ドイツ語もそこまで上手ではなかった私にしては期待以上の点数を取れたように思います。
なお、当記事で紹介した試験内容については、職業によって本当に異なります。
例えば、ITのような職種にとってWISOは重要ではありません。しかし、KaufmannやKauffrauといった事務系や他の専門職ではない職業の場合、WISOの問題が少し難しくなっているかもしれません。
もしくは、共通・専門科目のところでWISOを深く掘り下げた内容が出題されるといった場合があると思います。
職業によって内容が異なりますので、ご自身で過去問を見てみるなどして確認されることをお勧めします。
AusbildungやUmschulungの最終試験がどんな感じかイメージつけることはできましたでしょうか?
当記事がこれからAusbildungやUmschulungを始めたい人・始めている方に、少しでも参考になったのなら幸いです。
私がUmschulung中に行った勉強法については以下の記事をご参照ください。
経験者による、職業訓練(Ausbildung)や職業転換訓練(Umschulung)のためのベストな勉強方法大変なことも多いと思いますが、頑張ってくださいね!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
AusbildungやUmschulung中のメンタル維持についてはこちらの記事を↓
職業訓練(Ausbildung)や職業転換訓練(Umschulung)中のメンタルの維持方法職業選びについてはこちらの記事を↓
職業の選び方!ドイツで職業訓練(Ausbildung)や職業転換訓練(Umschulung)を始める前に自分に合う職業を考える