ドイツに興味がある方であれば職業訓練制度(Ausbildung)をご存じの方が多いと思います。
しかし当記事では、Ausbildungについてではなく「職業転換訓練制度(Umschulung)」についての記事です。最終的には同じ資格を取得出来るのですが、Ausbildungと異なるところがあるのでいくつか紹介していきたいと思います。
職業転換訓練(Umschulung)をするためにはいくつか条件がありますが、Ausbildung以外の方法でもIHK(ドイツの商工会議所)の資格を取得出来る方法があるということをこの記事でお伝えしたいと思います。
- ドイツに興味がある人
- 手に職を付けたい人
- 大学・専門学校に行ったが違う職業につきたい人
- 職業転換訓練に興味がある人(Ausbildungを含め)
- 結婚でドイツに来たけどしたいことがない人 etc.
目次
職業転換訓練とは、別分野の職種に転職するための新たな技能や前提条件を身につけることです。簡単に言うと、転職したいけどスキルがないのでそのためのスキルを身につけるということですね。
例えば、
日本に居た時、養護教諭(保健室の先生)になるための大学を卒業したけどドイツにはそんな職業がない!違う職業についてみたいけどスキルないし…。
消防士の資格があるけど、腰を痛めてしまって肉体労働の仕事は今後できそうにない!消防士として経験はあるけど、他に使えそうな資格もスキルもないし…。
これらは一部の例ですが、これまでしてきた事が出来なくて転職をせざるを得ないという方は特にこの職業転換訓練制度(Umschulung)がおすすめ!
なので、例えば高校卒業したてで何かの職業経験がない場合、職業転換訓練(Umschulung)ではなく職業訓練(Ausbildung)の方になります。
しかしこの条件というのはケースバイケースな場合も多く、就職(斡旋)雇用機関(Arbeitsagentur für Arbeit)もしくはジョブセンターの担当者の判断によります。担当が違っていたら私も職業転換訓練できなかった可能性だってありますので、ご自身が対象者かどうか確認されることをおすすめします。
ちなみに、就職(斡旋)雇用機関かジョブセンターなのか分からない時の判断は以下をご参考下さい。
- 就職(斡旋)雇用機関:失業手当(Arbeitslosengeld 1)受給者もしくはそれ以外(国から支援を受けていない)
- ジョブセンター:生活保護(Arbeitslosengeld 2 / Hartz-4 (Bürgergeld))受給者
ご自身が職業転換訓練出来るかどうかだけでも一度確認してみるといいですよ!
就職(斡旋)雇用機関では就職アドバイスも受け付けているようなので、興味のある方は一度面会予約を取ってみるのをおすすめします。私も面会を通してUmschulungを知り、始めました。
一般的には、10代・20代前半の方がAusbildungを、一度Ausbildungや大学を卒業し就職経験を経た人がUmschulungをすることが多いです。
また、ここで言う職業転換訓練(Umschulung)は、ある教育機関で行う職業転換訓練(Schulische Umschulung)を元に紹介しています。
職業転換訓練(Umschulung)として選べる職業には実は限りがあります。
以下、参考として職業転換訓練で出来る職業の一部をあげてみました。
- プログラマー(Fachinformatiker für Anwendungsentwicklung)
- システムエンジニア(Fachinformatiker für Systemintegration)
- 販売員(Verkäufer/innen)
- 電気技術者(Mechatroniker/innen)
- 税務署員(Steuerfachangestellte)
- 倉庫係(Fachlagerist/-in)
- 介護士(Altenpfleger/-in)
- 事務員(Bürokaufmann/-frau)
- …
実はすべての職業がある訳ではなく、Ausbildungに比べると選択範囲はかなり減ります。職業転換訓練でできる職業の分野は、IT・メカニック・産業・貿易、商業、看護業界です。
しかし、一度選んだ職種が失敗だったとしても、もう一度違う職種に挑戦できるというチャンスがあるというのは素晴らしい機会だと思いませんか?
どんな職種があるのか、こちらのサイトから見ることができます。
結論から言うと、外国籍でも職業転換訓練(Umschulung)は出来ます。
私は日本国籍を所有しており、現時点では長期滞在許可(3年)を持っています。職業転換訓練をするにあたり大切なのが、この長期の滞在許可を持っていることです。
私の場合、ドイツ人と結婚しているため配偶者ビザ(配偶者のための滞在許可)を持っています。結婚してからまだ3年経っていないため、まだ3年間の滞在許可しかありません。ただ、結婚に伴う滞在許可ですので職業転換訓練の申請は簡単でした。
もし永住権がなく、配偶者ビザをお持ちでない方(例えば雇用先指定付きの就労ビザ)の場合、職業転換訓練(Umschulung)をすることはもしかしたら難しいかもしれません。
滞在許可にもたくさん種類があるため、ご自身がお持ちの滞在許可が条件に当てはまるかどうか、就職(斡旋)雇用機関に問い合わせして確認してみてください。
職業転換訓練(Umschulung)をするためには、職業転換訓練を受けるための教育機関(Bildungszentrum)を見つける必要があります。
私の場合、ライプツィヒ(Leipzig)に住所があるためライプツィヒでのみ職業転換訓練を申請することが可能でした。また、どの教育機関にするかは就職(斡旋)雇用機関のサイトで調べることができ、自分で選べます。
私はライプツィヒにある3つの教育機関に予約を取り、授業内容・オンラインで授業が開催されるのか・教育機関の雰囲気などを下見して選びました。私が選んだのは、対面授業のある教育機関で授業内容が今後したいことに似ているもの、そして家から近いところを選びました。
対面授業がいいのかオンライン授業がいいのかは人によって意見が異なると思います。コロナで対面授業のある教育機関にも関わらずオンライン授業の時もあったため、どちらがいいのか・メリットやデメリットについてはまた別の記事でまとめたいと思います。
こちらのサイトから教育機関を調べることができます。授業開始日等も見ることができますよ。
これまで職業転換訓練のことをドイツ語で「Umschulung」と読んできました。
間違いではないのですが、実は「berufliche Weiterbildung」とも呼ばれています。直訳すると、「職業の継続教育」です。ここで気になるのが、「継続」という言葉。継続ということは、その職業についての経験や知識が既にある人が対象なのでは?という疑問です。前もってその分野の知識や経験があればもちろんいいですが、全くない場合でも職業転換訓練は始められます。特徴として、計2年間でドイツが認めるIHK(ドイツの商工会議所)が出す証明書がもらえるものが多いです。
実は「継続教育(Weiterbildung)」と呼ばれるものも存在しています。これは、今持っているスキルだけでは少ないので、そのスキルに加えて新しいスキルを身につけるのが 継続教育(Weiterbildung )の目的です。この場合、同じ分野でのスキルアップです。
たとえば、
私は事務員。会社の都合で今後もっと詳しいITの知識が必要になりそう…。Wordpressの知識があったら給料も上がるし仕事にも役立つから、半年の継続教育(Weiterbildung)を受けてスキルアップしてみよう!
この継続教育(Weiterbildung)の特徴としては、受講する期間が短いことです。
2年間続く職業転換訓練(Umschulung)とは違い、1週間~半年、1年くらいまでのものが多いです。費用は国が負担してくれるものもあれば、ご自身で全額もしくは一部を負担しないといけないものがあるようです。また、継続教育(Weiterbildung)で最終もらえる証明書はIHKのものではありません。転職する際や知識を増やす・スキルを上げたい時に利用する方が多いです。
ドイツに興味のある方は「アウスビルドゥング(Ausbildung)」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?
アウスビルドゥング(Ausbildung)を日本語に訳すと、職業訓練(制度)です。職業を訓練する制度、つまり、ある職業につくための訓練ができる制度です。
これだけ聞くと職業転換訓練(Umschulung)とあまり変わらないと感じる方もいらっしゃるかもしれません。最終的なゴール(=IHKの取得)は同じなのですが、資格を取得するまでの制度が異なります。以下、簡単に違いをあげてみました。
- 計2年間続く
- 雇用先:教育機関(職業転換訓練を提供している機関で、就職斡旋機関やジョブセンターから資金を貰い経営している)
- 申請先:就職斡旋機関もしくはジョブセンター
- 収入:給料なし(資金的支援が必要な場合、生活保護や失業手当の受給あり)
- 費用:なし(自身で負担する費用0)
- 勉強の形態:1年6カ月間は教育機関で理論を、6カ月間はどこかの企業でインターンシップ
- 計2~3年間続く
- 雇用先:一般企業
- 申請先:一般企業(職業訓練をしたいところの企業に自分で応募)
- 収入:企業から給料あり*(*金額には職業によっても異なり、全くでない場合もあり)
- 費用:交通費等はおそらく自己負担、福利厚生費は給料より引かれる
- 勉強の形態:週に2日職業学校(Berufsschule)で理論、週3日は企業で仕事(実践)
(場所によれば異なったスケジュールのところもあるよう)
大きな違いは、①給料の有無、②雇用先、③勉強の形態です。
もう少し詳しい違いや、どちらかを選ぶことになった際の選ぶポイントなどを別記事でまとめたいと思っています。
結論として、職業転換訓練を受けられる条件が揃っているのであれば挑戦してみる価値はあります!特に、IHK(ドイツの商工会議所)が実施する試験に合格すれば、ドイツでの就職がかなり有利になります。知識やスキルの証明だけでなく、ドイツ語の証明にも繋がるでしょう。
この職業転換訓練を開始するにあたりいくつか注意点もあります。
職業転換訓練をする前に気を付けたいことについては、職業転換訓練(Umschulung)を始める前に知っておきたいこと・注意したいことの記事を参考下さい↓
職業転換訓練(Umschulung)を始める前に知っておきたいこと・注意したいこと
私がUmschulung中に後悔したこととアドバイスをまとめた記事はこちら↓
最後まで読んでいただきありがとうございました!
私のドイツでの経験が誰かのお役に立てたらと思いこの記事を書いてみました。今後も職業転換訓練(Umschulung)に関連する記事も書いていきますので、興味のある方はぜひ楽しみにしていて下さいね。
最後に。当記事で記載したいくつかの条件ですが、開始する時期によって変更される場合もあります。また、私の経験をお伝えすることはできますがご自身が条件に当てはまるかどうかお伝えしかねますので、就職(斡旋)雇用機関もしくはジョブセンターに問い合わせてみてください。
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